南の島
南の島に行きたい。
私は不満や閉塞感があると、南の島に行きたい病を発症する。
外に出て遊んでいる人をニュースで見ると、自分が馬鹿馬鹿しくなってくる。私は何を我慢しているんだろう。家にこもって寝て起きて課題やって楽しくない。
だからといって外に出る気にはなれない。
私は家にいられるだけマシじゃないか。仕事で外に出なきゃいけない人がいるのだから。在宅万歳。ずっと家でいい。大学、休みにしてくれてありがとう。
でも南の島には行きたい。遊んで暮らしたい。常夏の国で朝からお酒を飲み、好きなだけパイナップルやメロンを食べ、海で背泳ぎしたい。日焼け止めなどいらない。シャワーを浴びたらしみるくらいの日焼けも、お土産の一つだ。
いっそのこと家の中にいながら南の島に行きたい。無理か。
実のところ、私は南の島が具体的にどのようなものか知らない。なぜなら行ったことがないからだ。
沖縄にも行ったことがない。高校の修学旅行で行くはずだったのに、私は修学旅行を休んだ。私は首里城をこの目で見る機会を逃し、首里城はほどなくして焼失した。
「いつか沖縄に行って首里城を見たい」
高校時代の心残りだった。大人になったら叶えたいと思っていたのに。新婚旅行でもいい。友人と行く旅行でもいい。
燃え上がる炎が私の純朴な希望まで灰にした。
南の島の人だって、毎日遊んでいるというわけではない。南の島なら穏やかでゆったり生活できるだなんて、行ったことのない人が抱きがちな幻想である。南の島にものん気でいられない事情がたくさんある。当たり前だ。
しかし空想するのは自由だ。私が頭の中で思い描く南の島は、いつだってさくらももこが作り上げた南の島である。あるいは、南の島のハメハメハ大王という歌。
『まるちゃん、南の島へ行く』の巻↓
【前編】https://youtu.be/vrAVTyNDQZM
【後編】https://youtu.be/bfPvk2KuGRQ
訪れたことのない南の島に思いを馳せる…ところまでは楽しいのだが、現実から逃げられないことに気づいて切なくなり、勝手にセンチメンタルになってしまう。
暗い気持ちになってもいい。それでも南の島に行きたい。